府中の家

 東京都府中市の小さな平屋の計画です。はじめて会ったときに「庭と暮らしたい」と言われた建て主さん。傘寿を間近に控え、これまで大切にしてきた樹々を眺め、手入れしながら豊かに暮らしたい、という強い想いがあったようです。

 家づくりはその庭を考えることから始めました。育ててきた柚子や夏みかんの樹を計画の中心に据え、山野草と雑木による作庭が行われました。住宅は一室空間と水回りから成るL型プランで、南東の庭に向けてオープンにし、家のどこからでも庭を楽しめるようにしています。隣に暮らす子世帯との往来もしやすくしました。主に西川材(埼玉県飯能市)の杉からなる架構、床の桐板、壁の砂しっくいなどの素材で構成しています。

 あえて高齢者に特化した仕様とせずに、普遍的な心地よさを追求することで、時間とともに住まい方が変わったとしても、住み続け、住み継げる家になればという想いを込めて設計しました。

私の住み心地
内と外が繋がる家で、明るく開放感があり、快適な暮らしです。とにかく気持ちがいいです。プライバシーが保たれ、日の光を感じながら、庭を眺めながらの、晴れやかな暮らしは最高です。ワンフロアでの生活で家時間が数倍楽しくなりました。建物の美しい佇まい、桐床や砂漆喰壁など自然素材に包まれる暮らしは落ち着きます。空気がやわらかく感じます。毎日まったりとした空間で、友人・知人との会話も増えました。家が変わると、こんなにも平穏な心で暮らせるのだと思いました。大らかな気持ちの毎日です。

所 在 地 東京都府中市
用  途 住宅
工  種 新築
構  造 木造平屋建 在来工法 地盤改良+ベタ基礎
敷地面積 181㎡(55坪)
建築面積 54㎡(16坪)
延床面積 52㎡(15坪)
工事費 2000万円台中盤
設計監理 後藤智揮(後藤組設計室)
構造設計 荒木美香(荒木美香構造設計事務所)
施  工 五味敬之(現場監督) 吉川総(棟梁) (友伸建設株式会社)
作  庭 楠 耕慈(風(ふわり))
設計期間 2021年11月-2022年6月
施工期間 2022年7月-2023年1月
ごも日記 「府中の家」編
仕様概要 Ua値 0.54
耐震等級3相当
屋根:ガルバリウム鋼板+通気層+スタイロフォーム3種B100mm(屋根断熱)
外壁:杉板+通気層+高性能グラスウール105mm(充填断熱)
内壁:砂しっくい塗(一部 アウロ 自然塗料)
床 :桐板、基礎:スタイロフォーム3種Bt=50mm(基礎断熱)
暖房:温水式床暖房
メディア 渡辺篤史の建もの探訪(テレビ朝日 2024/01/13放送)
建築知識ビルダーズ No53号(エクスナレッジ)
  • 青々とした新緑の庭。

  • 庭に面したL型のテラス。軒が深く、天気によらず利用できる。

  • 居間からは風に揺れる庭木が眺められる。

  • 寝室からも庭やアプローチの緑が楽しめる。

  • 風に揺れるアオダモとイロハモミジ。

  • 庭に面して深い軒あり、テラス、スロープを設えた開放的なプラン。

  • 隣家に住む子世帯との行き来にも配慮した計画。

  • 大きく育った柚子の木を囲うようなL型プラン。

  • 台所からの眺め。中庭周りの木製建具は、隠し框として性能を確保。

  • 庭との間はガラスで納めた。両端がFIXで中央を引き戸とした。

  • ダイニングからの眺め。光に照らされた砂しっくいの壁。

  • 入り口はスロープ。高齢者に限定せず、誰にでも使いやすいように計画した。

  • 隅木と登り梁。登り梁は西川材(飯能市の杉材)で等間隔でかけている。

  • 寝室スペースの小窓からはアプローチの飛び石(左)と主庭(右)が眺められる。

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