
麦焼処 麦踏
史跡に立つ空き家を片浦地域の拠点に。地域を巻き込んで行った縁側のあるパン屋さんの改修です。
2018年1月、小田原市南部、片浦で地域唯一のパン屋さんがオープンしました。バターロールがウリの小さなお店、麦焼処 麦踏(むぎふみ)です。自ら栽培している湘南小麦、地元のオリーブやオレンジ、有機卵をつかったハード系のパンは連日売り切れとなり盛況ぶりです。
片浦はJR東海道線唯一の無人駅、根府川駅がある地域。太平洋やみかん畑といった豊かな自然がありますが、最近は過疎化、空き家化が進んできたエリアです。一方で片浦ならではの環境に惹かれた人たちが集まって来ていて、「片浦食エネプロジェクト」や「Re農地講座」など企画運営されています。そうした中で天正庵(※小田原城攻めの際に千利休が茶を点てたといわれる茶室)跡に立つ空き家を改修してパン屋さんを開くことになりました。
開発許可の申請などオープンまでには時間がかかりましたが、実現には多くの人たちが積極的に関わりました。地元の片浦空き家バンクによるマッチングから始まり、地域内外の老若男女をまきこんだワークショップや建築学生の実務実践、地域材の積極的利用や地域工務店による施工など、パン屋さんをこの地域の拠点とするべく、プロジェクトが進みました。オープン前から多くの人たちを巻き込むことで地域に根付き、かつ片浦だけにとどまらない地域外の方にも愛される地域の拠点としてのパン屋さんが生まれました。
今回の改修で売り場の上には吹き抜けを設け、高窓からの採光を計画。暗かった室内を明るく清潔な空間にしました。既存建物を生かして、大きなツバキの木に寄りそう平屋の広々とした縁側や和室が地域の拠り所になっています。今後は、耕作放棄地での小麦の栽培や放置されているみかん小屋の活用といった、将来の拡張性も見据えています。
所在地 | 神奈川県小田原市江之浦 |
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用途 | パン屋併用住宅 |
工種 | 改修 |
建築面積 | 166㎡(50坪) |
延床面積 | 187㎡(57坪) |
改修面積 | 73㎡(22坪) |
工事費 | 1000万円未満 |
パン職人 | 宮下 純一(麦焼処 麦踏) |
設計監理 | 後藤 智揮(後藤組設計室) |
設計協力 | 津田 加奈子(日本女子大学) 倉田 慧一(日本大学) 矢口 芳正(東京理科大学) |
コーディネート | 瀬戸 ひふ美(片浦空き家バンク) 中嶋 滋夫(monowa) |
施 工 | 田島 賢治(瀬戸建設株式会社) |
設計期間 | 2016年7月〜2017年8月 |
開発許可 | 2017年12月〜2017年8月 |
施工期間 | 2017年9月〜2017年12月 |
ごも日記 | 「麦焼処 麦踏(片浦のパン屋さん)」編 |
受賞 | 第35回住まいのリフォームコンクール 公益財団法人住宅リフォーム・紛争処理支援センター理事長賞 |
メディア | リフォーム産業新聞12月17日 No.1341 婦人画報2019年2月号『街パンと里パン』(ハースト婦人画報社) |
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改修前
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